映画「開戦前夜」を観てきました。個人的には、戦争映画の傑作の一つに数えていい作品だと感じています。
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映画の概要:「日本必敗」のシミュレーションと時代の「空気」
終戦直前の軍部・政府の中枢や宮中を描いた傑作としては、「日本のいちばん長い日」(1967年版・岡本喜八監督/2015年版・原田眞人監督※私は前者の方が優れていると思います)があります。
これに対し本作は、タイトル通り「開戦前夜」の動きを描いた作品です。
かつて日本に実在した「総力戦研究所」に集められた、官僚・軍・民間から選りすぐりの若きエリートたち。彼らが“模擬内閣”を結成して日米が開戦した場合の戦局をシミュレーションし、「日本必敗」という衝撃的な結論にたどり着きます。しかし、その予測は時代のもつ得体の知れない「空気」にのみこまれていく……という展開が描かれます。
監督と豪華キャスト陣
監督:石井裕也
「川の底からこんにちは」(2009年)、「舟を編む」(2013年)、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017年)、「茜色に焼かれる」(2021年)など多くの傑作を生み出してきた監督ですが、本作は、ひょっとしたら同監督の最高傑作になるかもしれません。
池松壮亮(主演)×仲野太賀の名コンビ
“模擬内閣”の内閣総理大臣役を池松壮亮、総理の女房役である内閣書記官長(現在の内閣官房長官)役を仲野太賀が演じています。NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主役を務める二人が、本作でも見事なコンビを見せています。
驚きのカメオ/配役:佐藤浩市
エンドロールを見て「えっ、この役あなただったんですか!」とびっくり仰天しました。役作りが完璧すぎて、観ている間はまったく気が付きませんでした。
見どころ:名作『十二人の怒れる男』を彷彿とさせる密室劇と、戦争へ突入する時代の得体の知れない「空気感」
映画の大部分は、「総力戦研究所」の模擬内閣における議論の場面に充てられています。これが実に面白いのです。
裁判の陪審員たちが一室で議論を重ねる名作密室劇「十二人の怒れる男」(1957年)を彷彿とさせる緊張感があり、監督も参考にされたのではないかと感じました。
また、劇場で購入したパンフレットの中で、原作著者の猪瀬直樹氏が「日本は『空気』に負けた」と述べられていましたが、映画を観てまさにその通りだと感じました。当時の軍部・政府中枢の多くが「勝てそうにない」「開戦は亡国につながる」と感づいていた(あるいは確信していた)にもかかわらず、時代の「空気」に飲み込まれていく様子が見事に表現されていました。
史実とフィクション、そして巡る議論
“模擬内閣”が出した「日本必敗」というシミュレーション結果自体は史実ですが、主人公の私的なエピソードなどはフィクションと思われます。
また、“模擬内閣”に圧力をかける存在として描かれる板倉大道陸軍少将(「総力戦研究所」初代所長の飯村穣陸軍中将がモデル)については、史実とかけ離れているとして、遺族(元フランス大使という高官)から訴訟を起こされている状況にあります。
おわりに
原作である猪瀬直樹氏の「昭和16年夏の敗戦」は昔一度読んだことがありますが、内容は忘れてしまっているので、もう一度読み返してみたいと思います。
併せて訴訟における双方の主張についても調べてみた上で、また改めてブログ記事にまとめる予定です。

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